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【書評】人間に備わる「細胞の浄化スイッチ」をONにする方法 ー SWITCH/ジェームズ・W・クレメント

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【書評】SWITCH/ジェームズ・W・クレメント

基本情報

書籍紹介

 ・タイトル:SWITCH

 ・著者  :ジェームズ・W・クレメント(with クリスティン・ロバーグ)

 ・出版  :日経BP

 

目次

 ・序文

 ・はじめに ー スイッチ

 ・第1章 イースター島と移植患者

 ・第2章 ごみ運搬車とリサイクル工場

 ・第3章 低身長症と突然変異

 ・第4章 沖縄、修道士、セブンスデー・アドベンチスト教の人々

 ・第5章 小児てんかんと世界的サイクリスト

 ・第6章 原始人と文明人

 ・第7章 クルミ穀物飼育の牛

 ・第8章 クジラ、げっ歯類、喫煙者

 ・第9章 血液検査と食品リスト

 ・おわりに

 ・謝辞

 ・原注

 

本書の要約

本書は最近流行りの「16時間断食」の効果を裏付けている「オートファジー」について、研究第一人者の手によって原理や効果を説明した書籍です。人間には”細胞の同化”(脂肪や筋肉を増やす)と”細胞の異化”(脂肪や筋肉を減らす)の2つの機能が存在し、常にどちらかが働いている状態です。そしてこの”細胞の異化”が行われる際に体内の古い細胞が新しい細胞に生まれ変わるため、この”細胞の異化”が行われている状態を保つことで老化や病気といったホルモンのトラブルを防ぐことに繋がると説明されています。またこの機能は人間だけでなく、地球上で最も寿命が長いと言われている哺乳類にも同じ機能が備わっており、癌などの事例がほとんど無いそうです。そこで本書では”細胞の同化”と”細胞の異化”が切り替わる瞬間を『SWITH』と称し、人間に備わる細胞の自動洗浄機能をONにするかが説明されています。

 

興味が湧いた方はぜひご購入ください♪

 

より詳しく説明

人間には”脂肪蓄積”や”筋肉形成”を促す「mTOR(エムトア)」という働きと、”細胞の浄化”や”脂肪燃焼”を促す「オートファジー」という働きが存在し、それぞれ「細胞の成長モード(細胞の同化)」と「細胞の自己浄化モード(細胞の異化)」という2つのモードとして、体内の細胞に作用すると言われています。この2つのモードは常に「どちらかが”ON”」になっており、出来る限り後者の「細胞の自己浄化モード(細胞の異化)」にする時間を増やす事で体内に新しい細胞を増やすことを推奨しています。そして、そのモードの切り替えのきっかけを『SWITCH』と称し、本書ではこのSWITCH(仕組み)について説明がされています。

”老化の防止”や”病状の改善”、”現代病の防止”などあらゆる健康面に良い結果をもたらすオートファジーは太古の時代から人間に備わっており、人間のゲノム(DNAの遺伝子情報)は約100万年あたりで0.5%しか変わっていないとされています。つまり、太古の時代から人間に備わっている「”細胞の自己洗浄機能”(オートファジー)をいかに引き出すか」が健康体のまま長く生きるための鍵になるのです。

オートファジーは”グルカゴン”と”インスリン”という2つのホルモンのバランスによって機能します。たんぱく質の摂取や低血糖、運動によって促進されるのがグルカゴンであり、グリコーゲン(グルコースが肝臓、筋肉、脂肪細胞に蓄えられる時の形態)の分解や、糖新生(肝臓でアミノ酸とグリセロールからグルコースをつくる)を促し、血中グルコース濃度を上昇させる働きを持ちます。つまりグルカゴンの主要な役割は、空腹時や運動時に血糖値を保つ(低くなり過ぎないように)ことにあります。逆にインスリン血糖値を低下させ、脂肪、筋肉、肝臓などの身体組織のグルコース貯蔵を促す動きをするため、主に食事をしたとき(特に糖質を摂取した時)にベータ細胞によって生成されるホルモンです。つまりオートファジーは”グルカゴン値”が上昇すると機能が始まる働きになります。

少し話が変わりますが、オートファジーと深く関わりがある働きにケトーシス状態」(体内に蓄えられた糖質がエネルギーとして消費され、体が脂肪をエネルギー源として代謝する)というものがあります。そしてこのケトーシス状態にすることは、オートファジーの働きを促進させることに繋がります。一般成人(70kg)の血液中(80キロカロリー)と筋肉(480キロカロリー)、肝臓(280キロカロリー)(合計約880キロカロリー)にはグルコースが備蓄されており、この蓄積されたグルコースは、約12時間のあいだ「糖質」を取らないでいると通常生活で消費するカロリーで全て使い果たされます。その段階から初めて「本物」の貯蔵エネルギー源である脂肪が燃やされ始めるのです。この状態がケトーシス状態であり、まさにオートファジーが行われている状態と言えます。

こういった細胞の働きは地球上で最も寿命が長い哺乳類として考えられているホッキョククジラ(推定213歳の個体が発見されている)でも発見されており、それらの個体からガンなどの発見記録もほとんどありません。ホッキョククジラは夏季には十分な餌を確保できますが、暗く寒い冬期はほとんど食べ物にありつけず極端なカロリー制限の状態となります。(この間、体に蓄えた脂肪を分解して作ったケトン体とオートファジーからエネルギーを得る。)また海中深く潜水する事で低酸素状態になった体内ではmTORがエネルギーの産生を低下させる(mTORの活動には十分な酸素が必要なため)ため、よりオートファジーが活性化しやすくなります。このように日常的にオートファジーを活性化させている動物からは、長寿や病気が少ないなどの報告が多数上っており、どれもオートファジーが重要なカギとなっている研究結果がでています。

そういった数多くのオートファジーに対する裏付けを示した最後は、我々人間が出来る最善の健康習慣や、それをより効率的に記録するためにチェックするべき値、それぞれの生活習慣に合わせた複数の著者からの提案がふんだんに散りばめられています。

 

感想

本書を通して

最近よく耳にする「オートファジー」という言葉をしっかりと理解したいと考えていた時に出会ったのが本書です。別の記事で紹介している『「空腹」こそ最強のクスリ』でもこのオートファジーが提唱されており、更に気になっていました。

まず本書のような”学術書”は 仮説 → 実証 の繰り返しでそれぞれの理論にしっかりと実験結果と裏付けがある流れが構築されており、非常に読んでいて楽しく感じられます。

そしてもう一つの読みどころは、章のところどころに込められた著者の思いです。

P131「私は、世界中で食生活のルールを変える取り組みがもっと増えることを強く望んでいる」

P186「私は、トランス脂肪酸が数年以内にすべての食品から一掃されることを希望する。」

と言った主張が散見され、どのような思いで日々研究し、どのような思いで執筆しているのかが読み取れます。

本書のような学術書は、まずざっくりとしか知らない体の仕組みやその理論をしっかりとして言葉(専門用語を含む)で理論を展開しながら説明をしてくれるので、今後自分が同じことを他人に話すときに非常に説明がしやすくなります。また理論を構成する上で必要になるであろう基礎知識も細かく記載をしてくれているので、私のような素人でもしっかり読めばオートファジーに付随する他の人体の仕組みまで説明できるようになります。つまり特定の分野におけるある程度の知識を網羅することができ、かつ研究者の深い理論展開を追う事で自分自身も理論性のトレーニングになると考えています。

本の内容はご想像の通りで、オートファジーやケトジェニックダイエット、オメガ3などの必要資質や運動や睡眠の重要性など、健康面でのあらゆる分野に対する著者の見解が載っていますので、最新の学術と裏付けに興味がある方にはとてもお勧めできる書籍だと思いました。

 

心に残った言葉

P12「25歳以上の読者に、残念なお知らせがある。あなたは今、医学的に見て「老化」が進んでいる。」

序盤に出てくるこの文章で、私は一気に本書へ引き込まれました(笑)興味を示したという点と、やはりこのような口調の本は読みやすく、内容の面白さも期待できたからです。

細胞の動きが変化するとともに、成長ホルモンの分泌は止まり、脳は完成に近づきなど、事実がことごとく並べられている文章は最初に読むと「読む姿勢」が前向きにならざる負えないと思います。

 

P44「生命とは破壊と構築の絶え間ないサイクルである。」

オートファジーの仕組みの本質を話すとこの文章になります。このように説明してくれる著者は本全体の構成や言葉が分かりやすく、我々素人でも十分に内容が把握できるものがほとんどです。

 

P101「米国臨床栄養学会誌に掲載された研究によると、昼食中に携帯電話を見ている人は(SNS、ネットサーフィン、ゲームなど、その用途を問わず)、食事をしたことの記憶が薄くなり、満腹感も少なく、午後に軽食を口にしやすくなる。その結果、毎日約200キロカロリーを多く消費するようになる。

「なるほど!」と感じた一文です。確かに食事制限をしているときに異様に空腹に悩まされる経験がありますが、食事の際はいつも何かをしている気がします。このような働きは食事や睡眠にも同じ事が言えるはずで、「ながら○○」は良い影響が体に無いと再認識させてくれた文章でした。

 

P166「現代人の食生活は、控えめに言っても、身体が進化の過程で築いてきた遺伝的遺産とまったく一致していない。農耕の出現は、世界中の人々の健康と幸福に悲惨な結果をもたらした。

この続きはぜひ本書を手にして読んで頂きたいところです。農耕が始まった事で南ヨーロッパの身長が15センチ低くなり、平均寿命も10年短く。アルツハイマー病や糖尿病、がんなどの病気が現れたのも、農耕が原因であると主張している点は、非常に興味深いと感じます。

本書内では『農耕』について、『人類史上最悪の過ち』『より良い生活に踏み出す決定的な一歩と思われているが、実は多くの点で、人類にとって二度と取り返しのつかない大失敗だった。』『農耕革命は確かに人間が自由に扱える食べ物の量を増やしたが、それはより質の高い食事や余暇の拡大にはつながらなかった。農耕革命は人類史上最大の詐欺だった』等、他の書籍で語られた、数多くの有名な言葉が紹介されており「糖質過多」についてどれほど悪影響があるかを物語っています。

 

私の行動変化

・低糖質の食事を習慣化する。

 ⇒ 丁度先月より低糖質弁当の「nosh」を始めており、記事で紹介させて頂いたばかりでした。以前よりプチ断食はしていましたが、朝は「ケロッグ」等シリアルを食べる事も多かったので、そこを改善しようと思います。朝と夜を「nosh」にして、昼は基本野菜のみ。どれほど空腹に襲われるかは未知数なので一旦初めて見て、また効果が出たタイミングで記事にして報告できればと思います。

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・オメガ3(特にDHAEPA)の含まれるサプリメントを購入する。

 ⇒ 糖質、たんぱく質を適量に抑えた場合、今後エネルギー源になるのは「脂質」のようです。また中でもオメガ3に分類される資質が良いとされているので、まずはオメガ3の表記があるサプリメントを。また同時にDHAやEPAと言った不足氏がちな資質も紹介されており、DHAは脳に良い影響を及ぼすようなので取り入れてみようと思います。

 

・23時~7時を食事可能時間とし、昼は野菜のみに限定してみる。

 ⇒ 既に同じような食事制限をしているので、継続の意味で記載しています。本の中では逆に睡眠を含めて16時間を食事抜き、間の8時間を食事可能時間としていますが、自分の場合「仕事中の睡魔」を避けたいため、明るい時間はほとんど食事をすることがありません。結果として夜と朝の2食生活になっていますが、オートファジーの原理原則には乗っとれているようなので、継続して行きます。

 

・良質な睡眠がとれるようにスケジュールを組む。

 ⇒ 最後にここが難関です。健康のために睡眠が大切な事は十分に理解していますが、今この記事の執筆もam3時~5時くらいです。根本課題は日中のタスク量で取捨選択の「捨」をやらないと、良質な睡眠をとるためのサイクルが出来ないことを自覚しています。10年後にこの記事を見て後悔しないように、今週のスケジュールは前週末に完全に作成して、新しいサイクルで生活ができるかにチャレンジしてみようと思います。

最後に

 連投させて頂くもう一つの記事「【書評】「空腹」こそ最強のクスリ」と読み比べて頂くと大変面白い内容になるかと思います。こういった学術書は同じテーマに対する複数の書籍を読み比べる事でより深く、より正しく情報を得る事が出来ますよね。

幸いまだ自分は20代なので、今のうちにこのような情報に触れる事が出来るのは大変ありがたい事です。それをしっかり自覚して行動に移していかないと知らない人と同じになってしまうので、食事、睡眠、運動を確実に習慣化できるように工夫して生活をしてみようと思います。もし仮に100歳以上まで生きれたのであれば、皆様にもっと良い体験談や食事法をお伝えできるかも知れません(笑)

それでは、最後までお読み頂き、ありがとうございました!

 
Written by 佐々木太一
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