基本情報
書籍紹介
タイトル : 東京改造計画
著者 : 堀江 貴文
出版 : 株式会社 幻冬舎
目次
序章 東京は政治屋たちの私物じゃない
第一章 経済
第二章 教育・社会保障
第三章 新型コロナウイルス対策
第四章 都政
第五章 未来の生き方
終章 今こそ、明るい未来のために、立ち上がろう
要約
堀江氏が東京都知事選挙に出馬すると噂されていた頃に出版された書籍。話の軸は主に「IT化」と資金調達のための「価格変動設定」そして「グローバル化」である。直接言葉では表されていないが、日本が抱えている「少子高齢化」と「多額の国債」へインパクトが起きるような内容も多い。本書で最もメッセージされていることは『常識を一回疑って、ゼロベースで議論してみよう』というもの。「大麻解禁」等の極論も議論を始めるためのきっかけを作る目的に過ぎないと書籍内でも提言している。また高齢者などITリテラシーが低い世代に対しての対応としては「変わらないでいいと考えるのは、優しさでは無い。ナメているだけだ。」と提供側への意見が強い。教育界においては「たまたま入った学校の先生に教わるより、日本一教え方が上手い林先生の授業をオンラインで受けた方がよっぽど学びになる。」と多少トゲがあるが”日本の教育に対するスタンス”が世界から遅れを取っていることを明確にし、そこに『議論を生む必要がある』事を本質的にメッセージをする目的はこうやって果たされている。全37項の提案は現在日本が抱える問題を解決する一案に過ぎず、全体を通して行われているのは『それぞれ見て見ぬフリをするのではなく、有権者である国民全員が政治に対するスタンスを変えない限り日本は良くならない』というメッセージである。
感想
本書を通して
まず第一にこのような”政治”の分野に自分の意見をはっきりと主張する姿勢は学ぶべき点が多い。色々と看板を背負った我々は守るモノのために自分の意見を表に出さない場面はあまりにも多いが、その姿勢は本当に守る事に繋がるのかは疑問が残る。土俵内での戦いより土俵そのものを変えに行く動きを誰かがしないと一向に踊らされるだけの可能性があると、改めて気付かされた。
また私は、恥ずかしながら小池百合子氏の『七つの0』を細部まで注視したことが無く、マニフェスト(目標)がここまで守られていないことを初めて知った。当然会社経営に関わる私にとって目標未達は致命的であり許されることでは無い。またリップサービスを活用する際も、裏で行う努力や無茶は生半可なものではない。ただそこを表に出してしまえばそれまでであり、自分の中で完全に処理し約束の結果だけを表に持っていくというスタンスは守っていくべきである。ここから先は私が事実を知った上で意見する場所だと感じる。マニフェスト以外に約束事は無いのか、そういった基本的なところから私は学び直さなければならない。
そして文中で最も心に残っている言葉は『東京都が徹底的にテレワークを導入し、お手本を見せるべきだ』という部分である。これは五章中第四章の冒頭に記載されている言葉であるが、ここまで読み進めている文脈で意味を捉えると堀江氏の訴えと自責の志が強く感じ取れる部分である。堀江氏は本書の中で「IT化」(ETCの完全導入)(キャッシュレス化)(テレワーク導入)や、「グローバル化」(共通語を英語に)を提案しているが『まずはお手本を見せるべきだ』というメッセージが置かれる点にとても共感する。これは国に対しての意見では無く、組織は結局”上次第”。日本の企業の上には制度上法律があり、この法律をつくる組織の立場は上だ。我々一企業が改革を進めるよりも日本の政治が改革をすることは比べ物にならない程のインパクトが起きる事が想像できる。
本書は、全体の文脈、堀江氏の訴えの本質をいかに読み取るか、いかに堀江氏と会話するかに重点を置いて読んで欲しい。一つ一つのコンテンツには「大麻解禁」や「リストラ計画」などトゲを感じる箇所があるが、これはあくまでの『一案』に過ぎない。結局言いたいことは『今のやり方では、抜本的な解決にならない』という点。堀江氏は反対意見とも向き合うスタンスを示しており、文脈から本質的な目的をキャッチし代替案も持った上での議論を求めているように感じる。また書籍内で「政治家」を「政治屋」と呼んでいる点からは『政治家のスタンス』に対しても強い意見があり、変えようとしている。そして私もそこは強く共感する部分がある。必要なのは否定では無く、私自身の手で変える以外方法は無いという点。政治家本人でないと分からないことがあるからこそ、私自身が政治の世界に入らない限り意見出来る幅は限りなく少ない。
最終的に私が感じたことは「私自身のスタンスの問題」である。堀江氏が戦っている土俵に私は乗れてすらいない。本質的課題は「政治主導者のスタンス」にあり、意見をする「我々がそこに参画していない」点である。政治主導者が悪い訳では全く無い。私は改めて、ここから経営や政治についての学びをより深めようと思った。今出来ることはコンテンツに対する意見に過ぎず、正直コンテンツは、タブーを除けば何をやっても同じである。大切なのは本質的課題に本気で向き合うコミュニティに参画する事。それが何十年後になるか分からないが、私が参画できるのはまだ先である。それまでは今参画できる方々にぜひ主導をお願いしたい。『リーダーのスタンス改革』今出来ることは会社での実践と日々の勉強。自分のスタンスに強く訴えをくれる書籍であった。
心に残った言葉
P2「今、我々が戦っているのは新型コロナウイルスだけでは無い。政治家たちの迷走、低レベルなワイドショー、過剰な自粛と感染者を叩く異常な同調圧力、そして一向に進まないオンライン化。これまで放置されてきた問題が一挙に顕在化してきている。」
序章より前の部分、本書の一番最初に載っている言葉の一つである。文末の「これまで放置されてきた問題」は「見て見ぬフリをしてきた問題」であり、かつ今も違和感を感じながらもアクションを起こしていない自覚がある私はここで読み進める上でのスタンスが形成された。
P7「言いっぱなしの公約がどうなったのか検証されない政治家とは、ずいぶんとお気楽な商売だ。僕のような民間企業の経営者だったらとっくにクビになっているだろう。」
マニフェストに記載された「七つの0(ゼロ)」(待機児童ゼロ、残業ゼロ、満員電車ゼロ、ペット殺処分ゼロ、介護離職ゼロ、都道電柱ゼロ、多摩格差ゼロ)が一向に実現していないことに対する意見。会社経営に関わり、政治に明るくない私の意見としてはこれがリップサービスなのか、また実現可能範囲なのかが把握できない。またそれぞれの公約に対して様々な意見が上がっているのも事実であり、全てが達成されていない訳では無いことも事実である。ここの一つの問題点としては、小池氏のオフィシャルウェブサイトに『七つの0』という表記が無い事。(https://www.yuriko.or.jp)リーダー自らが目標と進捗を公表する事で国民の政治参加がまた一歩促進されるのでは無いかと感じる。また以下にはいくつかの立場から『七つの0』についての意見を集めてみたので、自分がどの意見に一番近いか改めて考えてみて頂きたい。
一概に「全て未達」という意見を持つのは個人として無責任である。知った上でどのような意見を持つか、それぞれが決めるのが望ましい。そしてそれを持って私も含め政治に参画する必要があると改めて感じた。
P40「分散出勤の通達が出されたおかげで、ギューギュー詰め、おしくらまんじゅうのようだった「貨物列車」の状況は少しだけ改善された。」
この一説が載っている項は、「わたしたちは、社会や会社の奴隷では無い。もっと軽やかに生きられる。意味のない習慣を脱し、時代に合った生き方をしようじゃないか。」という言葉で締めくくられる。まず第一に誰もが「違和感」を感じているこの風景に「分かりやすい表現でドストレート」に意見を突き立てている事が印象的。この誰もが感じる「違和感」であっても、何か行動を起こしている人は少ないとこれもまた誰もが感じる「違和感」である。この一説で感じたことは「誰もが違和感を感じている」という事。ただそれでも守るべき家族が居て、今までの自分の実績があり、攻めるにも攻めれない状態にいる人が多いことも理解できる。だからこそ、我々のような若者が現状起きている問題を直視し、長い時間をかけて少しずつでも改善をしていかなければならないと改めて実感した。今までの習慣をすぐに変える事は困難なことが多いが、年々電車を利用する人を減らしていく事は可能だ。また電車に乗っている人を批判するのではなく、「私は乗らない」や「時間を変える」という若者が少しずつ増えていく事で解決できる。今必要なのは若者が主体的に行動し、長期的目線を持って文化を変えていく事だと改めて感じさせられる。
P88「たまたま入った学校の先生に教わるより、日本一教え方の上手い林先生の授業をオンラインで受けた方がよっぽど学びになる。」
P89「現場の先生は「教えること」ではなく生徒の勉強習慣やモチベーション維持を丁寧にサポートすることがメインになっていく。これは極めて重要な仕事だ。」
私は「教職は聖職」という鴨頭チャンネルで聞いた言葉が心にあり、先生という職業に対して強くリスペクトを抱いている。だからこそこのような意見はもっと別の言い回しがあるのでは無いかと率直に感じる。が、言っている事はその通りである。実際私の職場でも今まで「人が」研修や説明を行って業務を行っていた点を、全て「動画配信」に変更した。その結果「伝え方の違い」や「解釈のずれ」が無くなり、正しいオペレーションが正しい解釈で伝わり、生産性が向上したという結果を経験している。職場と学校は組織の目的が全く違うため同じでは無いが、「知識を蓄える」という文脈の授業であればオンライン授業に私は賛成である。そして後者の「チューター職」の重要性も理解できる。後は「教職の存在意義」に対して議論の余地があり、ここは現在現場で教員である方々にぜひ担って頂きたい。我々のような部外者では無く現場にいる主体者が「存在意義を発信」して頂きたい。堀江氏は「教職はいらない」と言っている訳では無く「存在意義を確立するべき」と言っている。どんな職業でも、AIに取られるといわれている職業でも、現場の主体者が考え工夫する事でAIに無い価値を提供できることは間違いない。
P103「「悪いものは悪い」と言って議論をすることすら否定した瞬間、人は思考停止する。」
これはネット上でも最も紹介されている「大麻解禁」の項で発されてるメッセージである。ここでも敢えて話題に上げさせて頂く。堀江氏少子化を食い止める案として「大麻解禁」「フリーセックス都市宣言」を提唱している。ただこれは要約でもお伝えしたように「議論のきっかけを提供している」だけ。つまり我々はコンテンツでは無くメッセージを受け取る必要がある。コンテンツへの反応では無くメッセージからの行動変化することが求められている。
P134「正しく恐れる」
コロナウイルスに対する大衆の反応についてメッセージしている。「放っておくとマスメディアは必要以上に危機感を煽るようになり、大衆は同調圧力によって他人と違う行動をする人を叩き始める。」というのは、本書が発行された2020年5月30日から今まで実際に起きたことである。当然マスクや消毒を批判している訳では無く「死者が少ない若者で経済を活性化させ、被害の大きい高齢者へ感染しないようにする動きを強化する。」という事を堀江氏は訴えている。この「正しく恐れる」というのは現代人は特に心の隅に留めておくべき言葉の一つだと感じた。
P139「まずは東京都が徹底的にテレワークを導入しお手本を見せるべきだ。そして可能な限り業務を民営化すれば、都の職員は大幅に削減できる。」
私はここで私自身の組織について深く考えた。「確かに国や自治体が大きく動いたら、我々企業側も良い訳の余地はない」と。とは言うものの、自分が属していない政界の変化を求めるのは筋が違い、自分の組織でまずは変化を繰り返していく事が必要と考えている。「IT化」「グローバル化」全員が、そして組織を見るリーダーから、出来る事を始めていくべきだと改めて感じた。
私の行動変化
Ⅰ、「政治学」のスクーリングに参加する。
→ 政治学はテキスト学習で進めていたが、教授や同じ学生と議論を進める事で更に自分の理解を深める事が出来ると感じた。
Ⅱ、違和感を感じている業務を、1つIT化する。
→ いつかやろうと思っていたのが正直。いつやるかのきっかけさえあれば出来るので、今回実行する。
Ⅲ、自部署内でピークタイムの出退勤を減らす。
→ 実際01月から取り組んでおり、生産性が悪いとされていた時間の出勤を無くしている。これは効果検証が必要。
最後に
初の書評記事、これらが蓄積されていくのはとても楽しみです。皆様のご意見、コメントやTwitterリプ、DMなどお待ちしております。それでは、最後までお読み頂きありがとうございました。